小林沙苗さんは変わったね、の巻

 
げんしけん第5話「北川さん登場の巻」には北川さん役で小林沙苗さんが出演していました。それを見て、うんうん唸って考えて、出した答えがこれ。あんまりネガティブなことを書くつもりはないので、まぁ、さらっと読んでいただければ。
 
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何を隠そう、鳥猫は小林さんのファンです。でも、いま冷静に振り返ってみると「小林沙苗@塔矢アキラ」のファン、と言った方が正確だったかもしれない。そのくらい、小林さんの演じた役の中では塔矢が別格でした。
 
塔矢を演じた小林さんの魅力はなんだったのか。鳥猫はこう考えます。
「荒削りだけど、他の人が持たないものを持っている。塔矢がヒカルを必死に追う姿と、小林さんの、アフレコに前のめりになって打ち込む姿がダブって見えた」

小林さんは舞台出身。「はじめの一歩」他でアフレコの経験はあったものの、「ヒカルの碁」をやっていた当時、まだ声優としての経験は十分ではなかった。だからこその「荒削りっぽさ」みたいなのを鳥猫は十分に感じ取っていたし、そこがこの人の武器だと思っていたわけです。
 
ヒカルの碁」が終わった当時は、女性ファンの人気がものすごくて、そのあとすぐに「ソニックX」で少年役(平たく言うと、ショタってやつ)が決まったこともあって、「あ〜この人はこの先こういう風に育っていくんだろうなぁ…」と思ったものです(同じ時期にやっていたE'Sのヒロイン役が、正直、めためただったこともあって)。ですが、その目論見は完全に外れて、「ヤミ帽」あたりからぐいーんと方向転換が進んで、男性ファンが増え、その人気に後押しされるようにして、女性キャラを演じることが多くなりました。
 
鳥猫はそのときすでに「この人は少年役で活きる人なんだ」と思い込んでましたから、そういう流れについていけず、長い間傍観してました。ここまでの鳥猫の見方はだいたい一貫していて、
 
「この人は声優っぽくない演技がウリで、少年役の方が向いている」
 
 
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ただ、それは結果的に、見当外れもいいとこでした。小林さんは与えられる役をただやみくもにこなしていたわけではなく、歩みを止めず、成長していた。それに気づかされたのが今回のげんしけん第5話「北川さん登場の巻」です。
 
 
北川さんという人は、主人公たちの通う大学の自治委員をやっていて、「サークルで使う部室を分配する」というどうでもいいことに心血を注ぎ、抵抗するものにはヒステリーを起こし、ときに不敵な笑みを浮かべ、委員長には弱く、顔を赤らめ、実は水虫に悩まされているという弱点を持つ、そういう人です。
 
 
で、今回、この記事を書くにあたって、北川さんのセリフをつぶさに解説していくことも考えたんですが、どうにも野暮になっちゃうので、最初のシーンだけ。
このシーンは、最初は物腰穏やかだった北川さんが、春日部と大野さんを前に「あんたらは廃部なのよ」的なことを説明しているうちにどんどんボルテージが上がっていって、最後絶叫に至る、という一分強の長ゼリフなんですが、その連続的なテンションの変化っていうんですか、そういうところがちゃんと計算されていて、最後の笑いに繋がっています。(単に「壊れてる」だけのキャラではないんで、そこは、注意です。)
 
このあとも小林さんによる北川さん描写は続いていって、クライマックスは「水虫発覚→告白→勝利者の笑み(ニヤァ)」なんですけどまぁそれは手元に残してる人に何度も味わっていただくということにして。彼女の再現力は高く、演技にブレはありません。
 
 
この話1本だけ見ても、もう小林さんに対して「荒削り」なんて言葉は口が裂けても使えないですよ。いつの間にやら彼女は「声優らしい声優」へと変化していた。
今回はこの変化に対して成長という言葉を使いたいですが、鳥猫は必ずしも「声優らしい声優」になることが成長だとは思ってません。「声優らしい声優」「声優らしい演技」というものは、それ自体に声優自身の持つ個性が埋没しかねないからです。でも、小林さんの思考回路を勝手に想像すると、やっぱり、仕事が増えていく中で「荒削りなままではだめ」「声優らしい演技を身に着けることも必要だ」と、小林さんは考えたんだと思います。そういう判断のもとで今があるのなら、それは多分成長と言えるんじゃないの、と鳥猫は思います。
 
そうやって、今の小林さんを評価しつつも、鳥猫さんとしては今まで、「小林さん=荒削り」という(実に単純な)意識が強かったために、今になって、「じゃあ、小林さんの個性って何だったの」っていうのが、ふっと見えなくなってしまっていて、それでちょっと面食らってる、というのも正直なところです。これは遠まわしに「そんなもんもうねーよ」と皮肉ってるわけではなくて、もう一度一から見ていって、ハッキリさせようと思っています。
 
 
やっぱり、アニメ中心にこれだけやってきて、これだけ力を伸ばしてきたって言う人は、今少ないですからね。アニメ至上主義者の鳥猫としても、今後に色々期待したいところです。ほんとに。
 
 
終わり