アナウンサーが当てるアナウンサー役と、声優が当てるアナウンサー役

 
うまくアニメにしのび込んだように見えても、わかってしまうものです(in ジャぱん 今週の冒頭)。今日はそれを理屈を捏ねて説明してみます。
 
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まんが家の久米田康治さんは、声優オタクが声優の声を聞き分ける能力を、
 
ダメ絶対音感

と表現しました*1。鳥猫がこれを少し補足して
 
ダメ絶対音感とは、声優オタクが頭の中に声のデータベースを作り、照合する能力である」
 
というように説明したとします。ていうかしました。ここで注目するのは、アニメを見ていたときに誰かの声を聞いて、それが声のデータベースに合致した場合はいいんですが、照合してはみたけども合致しなかった場合です。

 
Q.なぜ合致しなかったのか。その理由は?
 1.照合が足りないから。もしくはサンプル(セリフの量)が少なすぎるから。 
      → セリフをもうちょっと聞きながらもう一度照合すればわかるかも
 2.照合を何度かやって、サンプルも十分に集め、だいたい見当はついたが、一人に絞り込めない。→ 自分のデータベースの限界。
 3.自分がこの声の持ち主を知らない。→知らないんだからしょうがない。調査打ち切り

 
ダメ絶対音感」の能力をはかるとするなら、「よく訓練されたダメ絶対音感」は、データベースの量そのものよりも、上の3つの理由のうち、どの理由で合致しないのかを、明確に判断できるものであると言うことができます。*2

で、大事なのは3番。
「知らないということをどうやって判断するのか?」
ちょっと哲学的ですけど、この問いにはなんとかかんとか、答えることができます。
 
実は、「声のデータベース」というものは、声優個々人の声をデータベース化したもののみにとどまらず、「声優とはこんな声、こんな演技」というような、声優全体を統合した情報をも当然のようにして含んでいます。(これは結構大事なことです)
ですから、「声優全体を統合した情報」からみて、それにそぐわないと判断できたとすれば、「この人は声優じゃない、だから知らなくて当然」というように調査を打ち切ることが出来ます。
 
他方で、「声優全体を統合した情報」からみて、それに反しないけれども、誰であるか特定できない、という場合。実はこれは2番目の理由とかなり競合しています。おそらくこのような場合は「自分のまだ知らない声優さんの声」であるか、「よく知っている声優さんに騙されている」か、どちらかでしょう。どちらにしても、答えが出せないのなら、「声優であると判断した上で」調査を打ち切ることが出来ます。


 
ここまでの議論で、
 
「よく訓練されたダメ絶対音感は、その声の正体が誰であるかを特定できなくても、その正体が声優であるかそうでないかを判断することができる」
 
と主張することができます。これが、最初の表題に対する解答です。
 
 
直感的に言ってしまえば
「声優っぽいから、声優なんだろ。」
「声優っぽくないから、声優じゃないんだろ。」
ということですね。「○○っぽい」「○○っぽくない」という曖昧な部分を保証するのが、声優オタクが持つ、ダメ絶対音感という名の声のデータベース、その内の「声優全体を統合した情報」だ、ということも言えます。
 
 
余談ですが、「○○っぽい」の○○には別に何入れたって構わないわけです。「声優」というワードを入れたときが扱えるカテゴリとしては一番大きいですけど、たとえば「アイドル声優っぽい」でも、その妥当性はともかくとして、カテゴリを打つことはできる。「青二の人っぽい」「古臭いっぽい」「今どきっぽい」「グレーゾーンの声優っぽい」「アナウンサーが声当ててるみたいっぽい」etc…
 
妥当性はともかくとして。
 
 

*1:厳密にはダメ絶対音感の適用範囲はもうちょっと広いんですけども、割愛。出典:「かってに改蔵」17巻

*2:補足。長々と書きましたが、「よく訓練されたダメ絶対音感」の持ち主であれば、「照合する」という作業にたくさんの時間割いてはいけません。照合はなるべく短時間で済ませ、わからないならさっさと打ち切り、必要であればクレジットだけ先に見て、そのあとは作品と演技に集中するべきです。