前回予告で名前を出しただけのケロロ軍曹ですが、思いのほかリンク元の伸びが良く、これはまずいぞということで急遽予定を繰り上げてお送りしております。
ケロロ軍曹、作品全体としてもとても気に入っています。これ毎回言わなきゃと思ってたんですが、鳥猫は重度の声優ウォッチャーですけども、アニメの1回目を見るときはなるべく頭からっぽにして見るようにしています。声優の演技というのはあくまでアニメ作品という総合芸術のうちの一部ですから、そのスタンスは視聴者としても忘れてはいけないと思っております。
で、そういったスタンスを土台にしつつも、声優オタクですから声優ウォッチをやるわけですけど、ケロロ軍曹。やっぱりアフレコ方面のレベルも相当に高いと思うんですよね。「声優さんのレベルが高い」と書かなかったのには大きな訳があります。今日はそこのところをじっくり検証していきたいと思います。

(今日は特別長いので、まぁ、ざっと読んでください。)
 
・検証その一.声優はどうか
 ケロロ軍曹の声優陣はおおまかに2タイプに分けられます。(a)数多くのアニメで実績を積んでいるベテラン。だいたいカエル組。(b)若手だが声優ファンから広く認知度があるもの。その他。だいたい人間組。高い演技力が要求される小動物どもはベテランでがっちり固めつつ、女子キャラは割と遊ばせといて、それでいて実は結構やるのね、みたいな。そんなぼんやりした感じですけど。皆さんのイメージはどんな感じでしょうか。
・検証その二.キャスティングはどうか
 声優そのものの技能ではなく、キャラクターと親和性の高い声優を起用する(スタッフ側の)能力に注目します。鳥猫はこの部分もケロロ軍曹ってすごくいいとこ行ってると思います。皆さんバッチリだと思うんですが、特に、ギロロ中田譲治さん はそうそう簡単にできるキャスティングではないんじゃないでしょうか?あの、「渋い」を絵に描いたような中田さんの声で赤いカエルがしゃべる、もうそれ自体がギャグでしかありません。今になってみれば中田さん以外考えられないのですが。
・検証その三.演技指導についてはどうか
 演技指導って書くとなんか偉そうですけど、要は音響さんや監督さんによる「駄目だし」「(演技)演出」のことを指して言っているつもりです。
 
その一、そのニについては同意していただけるでしょうか?今日のキーポイントは三番目の「演技指導」です。かつてから私めは、「声優の演技力」「キャスティング」に次ぐ第三の要素が隠されているのではと感じていました。例えばどんなときにこの要素を感じるかというと、「声優陣の演技に統一感を感じたとき」です。優れた声優であれば他の声優の演技に同調することができるだろうし、優れたキャスティングはキャラと声優との間の違和感をなくし、結果的に作品のイメージ世界を守るように働くでしょう。しかし、それだけでは説明できない、何か見えない力のようなもので統一されているときがある。それなら、そこには「優れた演技指導」があるんじゃないの。というわけです。
 
(だんだん痛くなってきました…/小休止)
 
それで、「統一感」というキーワード以外にも「優れた演技指導」の存在を感じるときがあります。たとえば、今週のすももちゃんのお話です。すももちゃん役はあのいはたじゅりさん。(いはたじゅりって誰、という人はケロロのOP映像を見返しましょう。)アイドル役には現役アイドルを、という大胆起用。この起用が失敗したら「流行りの話題作り」とかネタで流されるところなんですが、そこを真面目に演出して、「現役アイドルだからこそ出せるアイドルっぽさ」みたいなとこまで昇華させたのはやっぱり演出の手柄なんじゃないの、と鳥猫なんかは思うわけです。
いはたじゅりさんのアフレコレポがテレ東のケロロ公式HPにあったりします。雰囲気が伝わってきますのでこの機会にぜひご一読を。http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/keroro/
(※※実のところいはたじゅりさんはこれが初アフレコではなかったんですが、鳥猫はいはたさんの他の役をよく知らないので、とりあえず「OPを歌ってる女子高生タレント」ということで話を進めています。)
声優としての訓練をしていない、いわゆる“タレントがやる声優”というのは、その事実だけで声優ファン、アニメファンからは敬遠されがちです。だいたいの人は過去の経験から来るものだと思うんですけど。こういうのって、タレント側に監督の指示に応えるだけの演技力がないのなら仕方がありませんが、「監督の指示が具体的にないと、どう動いて良いかわからない」というのもタレントさんの心情ではないでしょうか。そういう場合においも、演技指導というのは大事な役割を果たしているはずです。(逆のケースで言えば、有名声優をキャスティングするだけしといて、あとは投げっぱなしだから、経験の少ない声優やタレントが出てくるとすごく浮いちゃう、みたいなケースもありますよね。) 
ここまでで述べた三つの要素「声優の演技力」「キャスティング」「演技指導」はそれぞれ独立な要素ではありません。これらの要素が相互作用、または相互に補いあって、最後にアウトプットとして我々視聴者が何かを感じ取るわけです。ベストな組み合わせというのは個々人の好みもあって中々難しいですが、舵取りの部分がしっかりしていれば、大概は受け容れられるもんだと思います。
 
(もう少し続きます)
 
さて、さんざっぱら「演技指導が大事だ」と力説してきましたが、じゃあケロロ軍曹の音響監督は誰なの、ということで、改めてOPを見ると「音響監督 鶴岡陽太」とあります。鳥猫は全然面識のない方なんですが、googleで検索するとあるわあるわ、面識のあるアニメが(笑)。(鶴岡陽太さんのフィルモグラフィーhttp://www.allcinema.net/prog/show_p.php?num_p=131522
全部がそうとは言いませんし、全部を見てもいないのですが、この中で鳥猫が特に思い出深いのは、「キングゲイナー」「キノの旅」「絢爛舞踏祭」「NieA_7」と言ったところでしょうか。「キングゲイナー」は富野由悠季監督からの意向もすごく強そうなんで(富野監督はご自分で劇団に足を運んでキャストを発掘されるそうです)、置いとくとして。「キノの旅」のキノ・エルメスコンビですけどこれは衝撃的でした。特にエルメス。あのどこまでも素っ頓狂でとぼけた感じは、既存の声優の演技体系からはかなり外れたところにあるんですが、それでいてちゃんとエルメス(しゃべるバイク)の声に聞こえるし、次はどんな風にしゃべってくれるんだろう…とじーっと聞いていたのを覚えています。「NieA_7」はあの脱力〜な感じがたまらない作品ですね。折笠富美子さんの今風予備校生なキャラが強烈に印象に残ってます。今挙げた4本のアニメは、作品全体を見ても、声優に注目して見ても、好きなアニメたちです。
音響監督さんの仕事って、前から気になってはいたんですが、演技指導は監督との共同作業・連名みたいなところがあるし、で、実際どっちが多く指導してるのかなんだかよくわからないし、こうやって長々書いてきた今もよくわからないんですが、まぁ、どこかで確かに見えない力を送ってる人がいるらしい、というのが今回の収穫です。とりあえずこれからはアニメのタイトル、キャスティングと一緒に、音響監督の名前も覚えるようにします。そうすることで見えてくるものも沢山あるでしょうし。